お守り

2人席しか空いていなくて
そこに座っていたら
おばあさんが乗ってきた
他の2人席も空いていたが
なぜかおばあさんは
私の隣に座った

「ごめんね、もう98だから
前の席だと段差がきつくてねぇ…」おばあさんはそう言った

98かぁ…今考えてもかなりすごいなぁ

確かに、前の席は段差が
あって、とてもその98の
おばあさんが上れそうに
なかった

私は「全然構わないですよ、
荷物置きますか」
とかなんとか話した
すると「大丈夫よ」と
言われたので、私は単語帳
を開き読み始めた

少しするとおばあさんは
何かごそごそしだした
気になってちらっと見ると
鞄の中を必死に探っているようだった
おばあさんは片手には杖と
買い物袋を持っていて
片手しか使えないようだった

先ほど98と言ったが
本当に身体は小さく
座っていても辛そうな
おばあさんだった

1分ほど経っただろうか
ごそごそ探し物をしていた
おばあさんが何か私に
話しかけようとしている
おばあさんの方を向くと
「さっきもらったの、1つあげる」
そう言って1つのアメを
震える手で差し出した

私はお礼を言って
受け取ったのだが
このアメ1つを私に渡す
ために、わざわざ苦労して
鞄を探っていたのか、
見知らぬ私に
ただ隣に座っていた私に
わざわざつらいだろうに
アメを探してくれたのか
そう思うとなぜだか
泣きそうになった

おばあさんは私より手前で
バスを降りた
ありがとう、と言いながら

ありがとうは私の方だ
受験勉強に追われ
疲れはてていた私に
こんな幸せな時間を
与えてくれて
暖かい温もりをくれて
明日は入試本番だが
アメを御守りとして
持っていくつもりだ

余談ではあるが
私は今日までどの大学に
入るかがかなり重要
だと思っていた
もちろん大学が全てでは
ないけれど、やはり大学は
かなり人生に影響を
及ぼすだろうから

しかし今日その考えは
あっさりと変わった

単純な人間なんだなぁ…

きっと人生において
大事なことは
どんな人間になるか、
そして人にどんな影響を
与えるか、だと思った

私は志望校とは
全くちがうことだが
大学生になったら
今日のおばあさんのような
身体の弱ったお年寄りが
どうしたら今よりも
楽に暮らせるか、また
今どんな助けを必要と
しているかについて
勉強しようと思う

おばあさん