いい祖父だったよ

いつだったか、オレの祖父が入院する前に夢を見たんだよ。それでオレ朝目が覚めてお袋に聞いたんだ。
「爺ちゃん大丈夫だよな?何も病気とか無いよな?」
心配だったからね。その時は全然大丈夫だと思ってた。
実際元気な爺ちゃんでよく家に棚とか据え付けてくれたり、
頼んでも無いのに何かと色々世話をしてくれたり。
いい祖父だったよ。
それから1週間ぐらいかな。
突然お袋に爺ちゃんが入院したって聞かされたのは。
肺炎をこじらせただけだって、その時は聞かされて、しばらくすればすぐにでも退院できるって聞かされた。
入院した時はまさかとは思ったけど、安堵したよ。そして1ヶ月ぐらい時が過ぎて祖父の病名が発覚してさ、
末期の肺ガンだった。
早急に市内のヤブ医者経営の個人病院から国際病院に移ったんだ。
御袋から聞かされて、その時は何にも感じなかったんだよね。
そうか。もう直ぐかって。
けど、実際は半年ぐらいの余命だって言われてさ。
なんて言うか、この時はその言葉を信じない方がよかったんだと思う。
その時聞かされた”半年”って余命で爺ちゃんに何をしてやろうか、とか色々考えたけど、
オレはなんて言うか、そう言う爺ちゃんの喜ぶ事、考えれなかったんだよね。
んで、ずるずる暫く爺ちゃんと顔合わせれなかったんだよ、
都合があって。言い訳なんだよな。都合なんかそんなモンいらないハズなのに。
4回。病院に入院している爺ちゃんと会った。
最悪だった。後悔してるよ。
たったそんな回数しか会ってやる事ができなかったんだ。
そうそう、オレには弟がいて、かなり年が離れてるんだよ。
今は5歳ぐらいでさ。それでオレが”下らない用事”とやらに呆けてる時、
その弟と姉と御袋で爺ちゃんに会いに言ったんだ。
爺ちゃんの姿を見た事態も把握してない筈の弟は、爺ちゃんの弱々しい姿を見て泣き出したらしいんだよ。
それで、その話を聞いた時オレはやっとその時早く会わないと、って思い始めたんだ。
大勢が居るの共同の病室に一度いった後、病状悪化の為、
個室に移った後もう一度病院に足を運んだよ。
行ったよ。
会ったよ。
泣いたよ。
表面上じゃ泣けなかったな。
泣きゃよかったんだよ。けど爺ちゃんが心配するとヤだからな。
クダラネェ。泣きゃよかったんだけどさ。泣かなかったよ。
必死こいてヘラヘラして爺ちゃん少しでも笑わせようとした。
目頭が何度も熱くなりそうになるのをこらえ、爺ちゃんは起きれもしないくせに、
起き上がろうとしてオレに食べ物なんか食べろって、ろれつもろくに回らない癖に。周りに心配すんだよ。
それで満足するならって思って喰いたいとも思わないけど。
オレ、必死で喰うんだよ。
もう、そんな歳でもない筈なのに小遣いやるとか言われたり、
いつもは貰わなかったよ。オレ、笑って貰ったんだよ。
それで、もう無理なの解ってるのにオレ言うんだよ
「お爺ちゃん。元気んなったら、また釣りにいこう!。」
自分でそんな言葉いっておきながら危なく泣きそうになった。
それから本当に直ぐだったよ。次の朝に突然電話が掛かってきて。
「危ない」って
従姉妹の姉ちゃんの車に乗せられて病院に向かったんだよ。
意識が無かったよ。昨日は多少喋れた筈だったのにさ。
容態は著しく不安定で。
もう、いつ死んでもおかしくない状態でさ。
抗がん剤を投与して一時安定してるだけでさ、
苦しんでるのが顔から嫌な位伝わってきた。
オレ、その時、声かけてやれなかった。
声が出ないんだよ。
それで直ぐ席から立ち上がって
窓の外眺めてた。
意味もないのに。
これからいままで優しくしてくれた祖父の事、
ずーっと、考えてた、
色々でてきた、釣りの日の事、
爺ちゃんの家泊まりに行って、布団隣に引いて寝た事。
窓の方、向きながら、泣いてた。
なんとか涙拭いてさ、振り返るんだよ。
喋ると、泣いてたせいで鼻つまってるのばれるからさ、
なるべく喋んないように。
それで姉とか弟に適当に冷静ぶって何か言ったんだよ。
「泣くな」とかって、そうすると
オレの顔見た姉は何も言わないでまだ泣いてたんだけど
「アンタも泣いてたんじゃないの」とか言われたね。
暫くしたらもう病状は急変したよ。
突然苦しみだして息も絶え、絶え。
鼻に管刺さってるんだよ。
何でか解んないけど管がささってたんだ。
爺ちゃんが苦しむと同時にそこから何かどす黒い液体が流れ出てきて、
ベッドの下にぶら下がってる袋に溜まってくんだ。
また泣きそうになった。
必死に押しつぶしてきた感情が溢れだしそうになったよ。
「あ……ああ…!!」
「爺ちゃん!!」
やっと声がでた。
喋れた。
もっと、何か言わなくちゃ。何か言わなくちゃ。
そう思った。
それからずっと爺ちゃんに声をかけてた。
意識が無いから聞こえないと解っていても
声をかけつづけたよ。
暫くしたら、叔母が駆け込んできたんだ。
爺ちゃんの息子。いわゆる叔父と結婚した叔母なんで、
なんつーか、仲が結構悪かった筈なんだよ。
色々、叔父が家庭的な問題抱えてたせいもあって、
だから、てっきり何か変な事でも言うのかと思った。
「ごめん!!お爺ちゃん!!遅くなっちゃった!!」
泣いてたんだよ。
泣きまくりだったね。
鼻詰まって顔赤くしてあんま言葉になってないやんとか思ったよ。
それからずっと励ましまくったよ。
聞こえていようが聞こえていなかろうが、
最終的には祖母、従姉妹2人(本当は3人いるんだが仕事でいなかった)
従姉妹の叔母、母方の叔母、母、オレ姉、弟、オレが病室に集まった。
そのうち弟もガキで状況解らない筈なのに泣き出して
一緒なって何度も何度も爺ちゃんって呼んだんだよ、
やっと何度でも言える様になった。
「爺ちゃん!!。爺ちゃん!!。」
やっと泣ける様になった。
もう我慢なんかできる状態じゃなかった。
泣き出したオレの顔を見て婆ちゃんは握っていた爺ちゃんの左手を
オレに握らせてくれた。
ただ、ただ、泣きながら、何も反応してくれない
爺ちゃんの手を握りながら、何度も何度も爺ちゃんの手を握った。
30分ぐらいそうしてた。
そして、もう息をする回数が少なくなってきていた。
息の仕方も喉に”たん”がつまってる感じで
息を吸うときにガラガラと音がした。
本当に生きて欲しかった。ただ生きて欲しかった。
息をしてないと思ったら何度も何度も爺ちゃんの手を握った。
…突然止まった
オレは涙ボロボロ流しながらすぐさま叫んだよ
「爺ちゃん!!」
「何やってんだよ!!」
出せる限りの大きな声で、叫んだんだ。
「はーい!…」
ボソボソっとした声だったけど確かにそう叫んだんだ。
解るわけねぇのに、意識、無い筈なのに。
息もろくにできねぇのに。
もう髭が生えて痩せこけた爺ちゃんに頬擦りしたよ、
最後だったから。もう、爺ちゃんの暖かさ、感じる事できないから。
最後だから。
そして祖母が泣きながらこう言ったんだ、
「お爺ちゃん、もう頑張ったから。
 お兄ちゃん(叔父)これなかったのしょうがないから。
 休んでいいよ。もう頑張ったから。」
けど、オレはそう祖母がいってもやっぱり我慢できなかった、
ひでぇヤツだよ。オレは。
苦しんでる爺ちゃんに何度も何度も叫んでさ。
そして、直ぐだった。
医者と看護婦が2人部屋にはいってきて、
ヘンな機械見て。
すぐその後、自分の腕時計みて。
ああ、そうか。って。